雨と夢のあとに・第5話2005年05月14日 01:30

金曜ナイトドラマ「雨と夢のあとに」第5話。
……やられました。はあ、嫁さんの前でめっちゃ泣いてしまった、、
親子の別れだとか絆だとか、なんかそーゆーものにめっきり弱くなりました。
それにしても、やはりこのドラマは原作がしっかりしているのでしょうか。
ちょっと読んでみたくなりました。いや、きっと読むはず。
柳美里「雨と夢のあとに」(角川書店)

「天使の気持ち」の気持ち2005年05月14日 01:50

いまから15年前。
当時のASAHIネット(注:パソコン通信の時代です)にそんなタイトルのコーナー(「会議室」とゆー場所でした)がありまして。
23歳そこらでふらふら過ごしていた僕は、その“なんだか許されたような場所”を本拠地に、限りなくテキトーなことを書き散らしておりました。
ここで「書く」ということのおもしろさ、というかおそろしさ、というかすごさ、というか、うーん、なんと申しましょう、いっそ言ってしまえば“業”みたいなものに触れ、薄く傷跡を残され、結果、処女を捧げた箱入り乙女のような気にされてしまったのでした。
以来、「書く」ということが僕のそのそこの裏側の奥にズシッと凝り固まった宿命ならぬ宿便のようなものになり、いまに至る次第であります。
ということで、かくかくしかじか。
ともかく、僕にとって非常に思い出深い/思い入れ深い「天使の気持ち」という場所を、少しだけここに復活させたいと思います。
手元にデータが残っているもの(デジタルデータってすごいですね)をいくつか、気が向いたときにアップしていきます。
ぼちぼちいきましょう。

rakuen e, youkoso.2005年05月14日 02:45

 年老いた漁師は、ふと誰かの声を聞いたような気がして振り返った。
そして彼は、小船の周りに浮いている無数の肉片を——銀色に輝く肉片
を見つけた。漁師はやせ細った腕を伸ばし、その塊を拾い上げようとし
た。それは黎明の光に照らされながら、ゆっくりと波間を漂っていた。
              ゆっくりと波間を漂って
                波間を漂っ
                 を漂っ
 波     波     波     波     波     波
青青青青青青青青青青青青青青青青漂青青青青青青青青青青青青青青青
青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青
青青青青青青青青青青青青塊青青青青青青青青青青青青青青青青青青青
青青青青青青青青青青青青青青青青青青塊青青青青青青青青青青青青青
青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青楽園へ青青青青
青青青青青青あと少しだ青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青青
青血青青青青青青青肉青青青青青青血青青青青骨青青青青青青皮青青青
青青青青血青青青青青青蒼青青青青青青青青青青蒼青青青青青血青青青
青青青青青青青青青青青蒼蒼爆蒼蒼蒼青青青青青青青青青青青青青青青
青青青青青青青青青青青青蒼蒼青青青青青青光になる青青青青青青青青
青紺青紺青紺青紺青紺青紺青裂紺青紺青紺青紺青紺青紺青紺青紺青紺青
紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺膨紺紺紺紺紺紺紺紺ああ、この体が紺紺痛紺紺
紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺紺
紺紺紺紺何も見えない紺紺紺紺紺紺紺紺紺 sorede ii.紺紺紺紺紺紺紺紺
紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍紺藍
藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍眩しくて藍藍藍藍
藍藍藍藍藍藍藍藍すごい光だ藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍声が聞こえる藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍藍藍なんだろう?藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍 hayaku, oide.藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍藍
藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗藍暗
暗暗暗暗行ってみなきゃ、わからないよ暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗
暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗
暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗「よせよせ。上には何もないぜ」暗暗暗暗暗
暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗「楽園さ」暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗
暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗「おい、どこへ行くんだ?」暗暗暗暗暗暗暗
暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗
暗暗サヨナラ、退屈な世界暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗暗
闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗闇暗
闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇ぼくはその楽園を目指す闇闇闇闇闇
闇闇闇闇闇闇そして闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇闇
黒闇黒闇黒闇黒闇黒闇黒闇ここから飛び出してみよう黒闇黒闇黒闇黒闇
黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒黒
 ぼくは信じている。
 いつか長老が話してくれたあの伝説を。
「遥か天上には、楽園がある。かつて大勢の仲間たちがそこを目指し、
この平和な場所を旅立った。そして、二度とは帰ってこなかった。
……彼らは楽園に住み着いてしまったのだよ」
 彼らはまだ生きているだろうか? それとも、新たな魂となってこの
世界へと戻って来ているのだろうか?
 この退屈で真っ黒な世界へと。
 地の底から、また魂が生まれる。
            魂が生まれ
               魂が生
底底底底底底底底底底底底底底底底底底魂底底底底底底底底底底底底底
屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍屍

「怪談」について2005年05月14日 02:47

ものすごい怖がりなので、
あまり怖くない怪談を書いてみました。

たくわん小僧2005年05月14日 02:50

 それは昭和の暮れ方、僕が大学の一回生だった頃の話である。
 京都の大学に通うことになった僕は、兵庫の実家を離れ、京都で下宿生活をすることになった。大学が斡旋してくれた下宿先は、一軒の人家だった。
 金閣寺の近くにあるその家は、瓦葺きの古い木造の家だった。一階は大家さんの居宅、二階は和室が五部屋あり、三部屋に学生の下宿人が住んでいた。僕の部屋は四畳半で天井が低く、夕方になると西に開かれた窓から強烈な光が差し込んできた。
 下宿生活は快適とは言えなかった。西陽。埃っぽい土壁。網戸のない窓。不意に飛び込んでくる蛾や蜂。なかでも一階のトイレが薄気味悪かった。それは中庭を巡る廊下の突き当たりに厠然として佇んでいた。中庭は鬱蒼と木々が生い茂り、夜闇に覗けばなにかしらの影すら伺えるような気配がした。京都には、怪異が顔を出しやすい雰囲気がある。
 大学での生活がはじまって三月ほど経った頃。同じクラスのKという男が、僕の隣の部屋に下宿することになった。六畳間のその部屋は、僕が入居する前からずっと空室だった。Kが下宿を探していることを聞き、この部屋を紹介したのだ。
 Kは人付き合いのいい人間ではなく、大学でも襖一枚を隔てた下宿でも実際に言葉を交わすことはあまりなかった。僕自身もサークル活動に夢中で、下宿には夜遅くに戻ることが多くなっていた。季節は夏を過ぎ、Kとの親交を深められぬまま夜長の頃を迎えた。
 そんなある日のこと。珍しくKが僕の部屋を訪ねてきた。入ってきたKの顔は青白く、目の下にはうっすらと隈ができていた。
——おれさぁ、引っ越ししよかと思ってんねんけど。
 彼の話はこうだ。ときどき真夜中に、奇妙な物音が聞こえてくる、と。その音がたまらなく気持ち悪く、ノイローゼ気味になっているらしい。その音とは、
——それが、……たくわんをかじってるみたいな音なんや。
 人骨を食らう。死肉をむさぼる。生き血をすする。そのいずれでもなく、たくわんをかじる音。その意表を突いた表現は、京都の古い家屋の風情と即座に結びつき、妙な生々しさを伴った。
 たくわん小僧。古い民家に取り憑き、夜中にこっそりとたくわんをかじる。豆腐小僧、座敷わらし、あかなめ、枕返し……そんな妖怪たちの仲間が、この家の闇に潜んでいるのか。
 ほどなくしてKは下宿を去っていった。襖越しの六畳間はまた空室に戻った。
 あの日以来、僕も夢うつつに例の音を幾度か聞いた気がした。飛び起きると物音はすでにやんでいる。そのたびに僕はのどの渇きをおぼえ、冷蔵庫の扉を開ける。
 二回生に上がる前に、僕もその下宿を引き払った。引っ越した先は、新築のワンルームマンション。もうたくわん小僧に会うこともないだろう。
 しかし時折、夜中にあの音に目覚めることがあった。ぼりぼり、ぼりぼり、ぼりぼりぼり……
 その音の正体が僕の歯ぎしりであったことに気づいたのは、ずいぶん後のことである。

「翼が発売された。」について2005年05月14日 03:00

話の先行きも知れず、なんの推敲もなされず、ただ徒然なるままに、
小説かなんだかまだわからないものを書いてみたいと思います。

翼が発売された。00012005年05月14日 03:03

 翼が発売された。価格は二千五百ドル。NASAに研究用の部材を納入している樹脂加工会社が開発、販売している。発売当初は特別な宣伝もされず、素人づくりの商品紹介ウェブサイトがひっそりと開設されているだけだった。が、商品説明用につくられた動画がブロガーたちの話題となり、徐々にメディアに取り上げられるようになった。その動画には、巨大な翼を背負った男が砂浜を助走し、ゆっくりと中空へ駆け上がっていく様子が映っていた。男は地上三〇メートル付近を大きく羽ばたきながら右方向に旋回し、二分後に再び地上へと舞い降りた。映像の端には、飛翔する男を驚きの目で見上げる人々がとらえられていた。ウェブサイトの冒頭に記されたキャッチフレーズは、「Fly me to the sun.」。商品名は「SURACI」。商品説明の最後はこう締められている。「ご使用の際は取扱説明書をよくお読みの上、“言い付け”を守って安全お楽しみください」——
 翼は翼部と制御パネル、装着用のハーネス、操縦用の手袋で構成されている。翼部は開長三.二メートル、幅は一メートル、厚みは最大三五センチメートル。その形はツバメの翼に似ている。翼の表面には、木の葉型の形状記憶プラスチックが鱗状に重ねられている。その内部には伸縮性のある強化電熱線が葉脈のように張り巡らされ、形状記憶プラスチックのピースを複雑につないでいる。左右の翼の結合部には非常用の小型パラシュートが収められ、背中側にはバッテリーが組み込まれている。翼は両肩から伸びるハーネスと腹部のベルトで装着する。胸の辺りには二〇センチメートル角の制御パネルが配置され、電源スイッチとバッテリーランプ、動作確認ボタン、体重設定ダイヤル、非常用ボタンが並んでいる。操作用手袋はこの制御機構とワイヤレスで接続されており、上昇、はばたき、滑空、右旋回、左旋回、下降といった操作が指を動かすだけで可能となる。
 飛翔の仕組みは至ってシンプルで、電熱線の発熱による形状記憶プラスチックの変形がはばたきの力となる。形状記憶プラスチックは大小のピースが連動することにより、それぞれの微妙な変形が増幅され、大きく滑らかな翼の動きを生み出す。翼の変形に伴ってピースの密着度が高まるように設計されており、力強く風をはらむことができる。また、翼に取り込まれた空気が電熱線を瞬時に冷却し、素早い変化を繰り返し得られるようになっている。各ピースに伝わる発熱のタイミングは飛行の状態に合わせてプログラムされているため、複雑な操作の必要はない。私たちは翼の動きに身を任せ、ほんの少し大地を蹴りつけるだけでよい。

コータイ2005年05月14日 12:46

——見えるんですよ、崖の下から這い上がってくるのが……
——こっちをじっと見てるんです。その木の下から……
——逆さにぶら下がってたんです。部屋の扉んとこに……
——目を開けると顔の真ん前で肯いてるんですよ、女が……

 時刻は午前二時を過ぎていた。ファミリーレストランは昼間のように賑わっている。クーラーが利きすぎているのか、やけに肌寒い。
 目の前で話している男は、バイト先の同僚だ。午前零時に仕事が終わり、なんとなく、ちょっとお茶でも、ということになった。
——あー、やだな。あそこの暗いところに一人立ってますよ……
 ファミリーレストランに入ろうとしたとき、彼はだれにともなくそうつぶやいた。そこから彼の体験談がはじまった。
 彼はいわゆる「霊感」の強い人間である。次から次へと語られる実話は、どれもが不条理で唐突な霊の出没に彩られ、それが却ってリアルなイメージとなって伝わってくる。はじめはおもしろがって聞いていたが、だんだんと僕は、鳥肌が体の芯まで染みこんでいくような怖気を抑えられなくなっていた。
「でもそういうのって幻覚なんじゃない?」
 心にもない。僕はちょっと怖かったのだ。
 彼は、ですよねー、と笑いながら、ちらりと辺りをうかがい、小声でこう言った。
——見ます?
 彼はテーブル越しに身を乗り出し、右の手のひらを上に向けて僕の前に差し出した。
——あまりやっちゃいけないんですけど、
 よく見ててくださいね、と、次の瞬間……
 彼の手のひらから、糸こんにゃくのような白い光が何本も立ち昇りはじめた。それはイソギンチャクのようにゆらゆらと揺れている。
——神様がね、これは「善い力」だって言うんですよ。お化けが見えるようになることのどこが善い力なんでしょうねぇ?
 そんな言葉をぼんやりと聞きながら、僕の目は糸こんにゃくに釘付けになっていた。目の当たりにした心霊現象は、恐怖よりも崇高な、神聖な畏怖に満ちていた。そして、僕がなにかを言おうと口を開きかけたとき……
——タッチ、コータイ!
 彼の手が僕の左肩を叩いた。
 思わず叫ぶ。店内の人たちが振り向く。
——スミマセン、冗談ですよ冗談。
 その場はそれでお開きになった。僕たちはなにもなかったかのように家に帰った。
 そして後日。
「なにが冗談なものか……」
 霊感は、うつる。それは本当だった。あれ以来、僕も得体の知れない影が見えるようになってしまった。街で、家で、昼間の踏切で。
 この「善い力」は、いったい僕になにを与えてくれるのだろうか?……