宝くじ2006年05月31日 01:52

 宝くじを買う。もちろん当たりくじだ。言うまでもなく連番で十枚。結果、三億円だ。
 とりあえずはマンションのローンを返して、いまより部屋数の多い家に引っ越す。会社も辞めちゃえ。有り余る時間、意外と本気で小説でも書き、そのうち世に出ようか。派手な暮らしに興味はないし、家族四人、まあそこそこ幸せに暮らしていけるだろう。
 なんて、人並みな夢想に浸っていたとき、アイスキャンデーの棒に「アタリ」の文字が。
——ああ、こんなところで運を使っちゃったよ。
 ようするに、世界は二つ。アタリか。ハズレか。ちっちゃなアタリも当たりはあたり。運なんてそんなものだろう。
 そして先日、宝くじを買った。当たりくじを選んで。とりあえずはマンションのローンを返して、と。
 その夜、妻の枕元に置いてある電気スタンドの灯りが点かなくなった。
「接触悪いんかなあ」
 妻が電球をぐりぐりといじる。その時、
——ボン!
 爆発音が寝室にこだました。子どもがうーんと唸って丸くなる。
「大丈夫か!?」
 驚いて妻に問いかける。
 が、なにも起きていない。ただ電球の内側が真っ黒に煤けているだけだ。電球は破裂を免れた。
「ああ、びっくりしたあ」
 妻と僕が声をそろえる。子どもたちはすやすやと眠っている。
 もし電球が破裂してガラスが飛び散っていたら……と思うとゾッとした。
 僕は思わず呟く。
「ああ、また宝くじの運、使っちゃったよ」
 妻は、そんな言い方せんといてよ、とちょっと拗ねてみせる。
 しかし、僕は思う。これが宝くじの運だとしたら、とてつもない大当たりじゃないか、と。三億円なんかより、ずっと価値のある大当たり。
 運の抜けた十枚の紙切れは、それでも三百円の価値を持つ。宝くじの当選発表が終わったら、またアイスキャンデーでも買ってみるか。

2006.5.30

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