ミガワリ人形 ― 2006年12月08日 23:37
真夜中。カラン、という音に目を覚ました峰夫は、布団から出て音のしたリビングへ向かった。何かがフローリングの床に落ちた音だろう。
リビングの明かりを点け、眩しさに目を細めながら部屋を見回す。ほどなくチェストの下に転がり落ちた茶色い木片を発見した。十二年前、新婚旅行先のバリ島で買った木製の人形である。身代わり人形、として売られていたそれは、神事に用いる御幣人形に似たもので、家内安全のお守りとして峰夫が買ったものだった。
しかし、拾い上げた木片は人形の上半身だけだった。下半身はチェストの上に残っている。研ぎ澄まされた日本刀で薙いだように、切り口は奇麗に両断されていた。
峰夫は不吉な思いに身震いした。が、それはただのお守りではなく身代わり人形であったことを思い出し、それが迷信でないことを悟った。これから起きたであろう厄災を一身に引き受け、家族の不幸を救ってくれたのだろう。
日曜日、峰夫は庭の土に小さな穴を掘り、二つに分かれた人形を埋めて手を合わせた。私たち家族をお救いくださりありがとうございます……
数日後。峰夫は会社からの帰宅途中、居眠り運転のトラックに轢かれて死んだ。後輪に巻き込まれ、遺体は無残な姿となった。
が、衝突の衝撃で外れたのであろうか。彼の眼鏡は、傷ひとつなく路上に転がっていたという。
(完)
リビングの明かりを点け、眩しさに目を細めながら部屋を見回す。ほどなくチェストの下に転がり落ちた茶色い木片を発見した。十二年前、新婚旅行先のバリ島で買った木製の人形である。身代わり人形、として売られていたそれは、神事に用いる御幣人形に似たもので、家内安全のお守りとして峰夫が買ったものだった。
しかし、拾い上げた木片は人形の上半身だけだった。下半身はチェストの上に残っている。研ぎ澄まされた日本刀で薙いだように、切り口は奇麗に両断されていた。
峰夫は不吉な思いに身震いした。が、それはただのお守りではなく身代わり人形であったことを思い出し、それが迷信でないことを悟った。これから起きたであろう厄災を一身に引き受け、家族の不幸を救ってくれたのだろう。
日曜日、峰夫は庭の土に小さな穴を掘り、二つに分かれた人形を埋めて手を合わせた。私たち家族をお救いくださりありがとうございます……
数日後。峰夫は会社からの帰宅途中、居眠り運転のトラックに轢かれて死んだ。後輪に巻き込まれ、遺体は無残な姿となった。
が、衝突の衝撃で外れたのであろうか。彼の眼鏡は、傷ひとつなく路上に転がっていたという。
(完)
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